築20年以上の商業施設で、IoT電力センサが省エネの推進力に【導入事例|阪急阪神不動産株式会社】
- IoT 電力センサ
- SIRCクラウド

阪急阪神不動産株式会社は、関西エリアを中心に住宅、オフィス、商業施設などの開発・管理を手がける総合デベロッパー。梅田をはじめとする都市再開発や大規模複合施設の運営に加え、建物の省エネ化、再生可能エネルギーの導入、環境配慮型リノベーションを通じて、SDGsの実践と脱炭素社会の実現を目指しています。
お話を伺った方
阪急阪神不動産株式会社
賃貸事業本部 賃貸事業部 事業統括グループ 様
導入サービス
課題背景
・築20年を超える商業施設を数多く管理するなかで、カーボンニュートラル実現にむけた具体的かつ持続的な省エネ対策を模索していた。
・施設全体の電力量は計測できていたが、個別機器単位では把握できていない施設が多数あった。そのため、省エネ施策の効果測定や設備更新の優先順位づけが、経験則や予測ベースに頼らざるを得ない状況だった。
・CTなどを使った従来の簡易的な計測方法では精度に限界があり、データの信頼性や説得力に欠けていた。
成果
1.エネルギー使用の詳細を見える化できたことで、定量的な裏付けを持てるようになった
予測に頼っていた電力量が、リアルなデータとして把握できるようになり、設備更新や運転変更の効果を定量的に確認できるようになった。
2.クラウド連携で管理の効率化を実現
事務所や遠隔地からでも各施設のデータをモニタリングできるようになり、現場に行かずに状況把握・意思決定が可能になった。
3.さまざまな現場に対応できる使いやすさ
IoT電力センサは簡単に取り付けができるため、多様な設備での検証やトラブル対応にもフレキシブルに活用できるようになった。
導入前の課題
「古い商業施設の省エネ対策。電力使用量を見える化したい」
―関西を代表する企業様として、カーボンニュートラルへの取り組みにも、社会からの注目が集まっているのではないでしょうか。
阪急・阪神沿線エリア(梅田を中心に、西は神戸三宮、東は京都まで)で多くの商業施設を運営・管理する立場にありますので、社会に与える影響も小さくないと自覚しています。
とはいえ、築20年以上経っている物件も多いので、最新の省エネ設備が入っているわけではありません。国が示すカーボンニュートラルの目標は年々厳しくなっており、従来通りの運営方法では追いつかないという危機感もあり、省エネ対策やDX化はつねに模索している状況です。
―省エネ対策を進めるなかで、一番の課題は何でしたか?
電力使用の「見える化」がうまくできていなかったことです。ビル全体では把握できていたのですが、個別の機器ごとの電力消費までは測れていませんでした。そのため、設備の運転方法を見直すにも、予測ベースで判断せざるを得ず、「たぶんこのくらい使っているだろう」という推測で進めるしかない場面が多かったのです。
新しく展開する物件については、再生可能エネルギー由来の電力を導入したり、BEMS(ビルエネルギー マネジメントシステム)の導入などを行っていますが、古い施設となると個別に細かく改善策を施すことになりますからね。
―それまで電力使用量はどのように把握していましたか?
持ち歩き式のクランプメーターなどを使って、設備員が短時間だけ電流値のみを計測していました。たとえば数分間の電流値から「おそらくこの程度だろう」と予測し、そこから判断していました。計測データをもとに机上の計算で推測するしかなく、実際のデータに基づく確証ある判断ができていなかったのが大きな課題でした。
導入の経緯
「施設も設備も膨大な数。測りたいときにすぐに取り付けられるメリット」
―IoT電力センサを導入しようと思われた経緯についてお聞かせください。
以前からセンシング全般への関心が高まっていたことがきっかけです。DXや脱炭素への取り組みのなかで、施設管理においては空気環境(CO2や湿度など)のセンシングがますます重要になっています。
なかでも、電力使用量は重要なポイントとなるため、SIRCさんからご紹介いただいた時に「ぜひ使ってみたい」と思いました。
―SIRCの電力センサに決めた理由とは?
やはり一番は簡単に設置できること。既存設備の電線に後付けするだけなので、大がかりな工事が不要ですし、それほど大きな費用をかけずに導入できることは非常に助かりました。
当社は多くの施設を管理していますが、それぞれに異なる設備がある中で、柔軟に取り付けられるという点でも相性が良かったと思います。


▲電気室内の配電盤に設置された様子
―クラウドサービスも導入の決め手になりましたか?
それも非常に大きなポイントでした。クラウドに対応しているので、現場に行かなくても、どこからでもデータを確認できます。
施設数が多いため、いちいち現地でデータを取るのは現実的ではありません。グラフ表示や過去データの確認もクラウド上でできるので、本部側と現場が同じ情報をリアルタイムで共有できるのは大きなメリットだと思いました。

導入後の成果
「IoT電力センサ導入により、感覚や経験に頼らない実測値を把握できるようになった」
―電力センサを設置して、いちばん印象的だったことは?
ある施設でエレベーターの更新をした際に、その前後で消費電力量が予想以上に下がったことが分かったのです。正直「こんなに違うのか」と驚きました。
メーカーから提供される仕様値というのは実際の使用状況によって異なることが多く、今回の実測データで初めてリアルな運用実態を知ることができました。今は他の設備、たとえば空調機やエスカレーターなどにも必要に応じて電力センサを設置して計測しているところです。
―電力データを見える化することで、どのような省エネの成果がありましたか?
いま全体的に取り組んでいる空調最適化についても、効果を発揮しています。
空調最適化というのは、施設内の快適性を保ちつつ、ムダな使用電力を抑えようという取り組み。空気環境(CO2や湿度など)を監視しながら、「この運転方法ならどれくらい電力が下がるか」や「どこを止めれば快適さを保ちつつ、使用電力を下げられるか」といった検証を行っています。
電力センサによって空調設備を個別に計測し、実測値としてデータ検証ができるようになったことで、施設としての快適性と省エネのバランスを見定めやすくなりました。
―電力センサの導入前は、どのように検証していたのですか?
以前は、全体の電力使用量から対象期間の使用量を自分たちで算出していましたが、得られる数字は推測の範囲でした。
今は電力センサでリアルな数値が得られるので、「この運転でこの値なら問題ない」と自信を持って設備の稼働をコントロールできるようになりました。
また、設備トラブルが起きたときにも、「とりあえずセンサをつけて確認してみよう」とすぐに対応できる。固定設置ではなく、必要な時に必要な場所へ簡単に取り付けられるのはありがたいですね。
―クラウドの使い勝手はいかがですか?
非常に便利です。現地に行かなくても、いつでもどこからでもデータが見られるので、現場と本部の双方で情報を共有しながら判断できるようになりました。
とくに複数の施設を抱えている当社のような立場では、全体を俯瞰してモニタリングできるのは大きなメリットです。グラフで推移も確認できるので、過去のデータとの比較や、運用の改善提案もしやすくなりました。
―営業担当者のサポート対応についてはいかがですか?
想定外の事があった際にも、すぐに状況を把握し、別のラインナップをご提案いただいたりと、安心して導入を進めることができました。困ったときに頼れる存在がいるのは心強いですね。
さらなる改善に向けて
「テナント様はじめ広く情報共有をしながら、カーボンニュートラル実現をめざして」
―カーボンニュートラル実現への取り組み。IoT電力センサによって加速しそうですか?
空調最適化については、大学と連携してAI導入等の検討を進めており、その効果を正しく検証するためにも、電力の見える化がさらに重要になってくると思います。各施設における消費電力のうち、一番負荷が高いのは空調設備ですから、最重要課題と捉えています。
また最近では、省エネ対策に積極的なテナント様から、具体的な数値を求められるケースもあります。今後、省エネ対策を推し進めていくためには、テナント様との連携が不可欠ですから、センサによるデータの「見える化」は強い味方になると思います。
―SIRCの電力センサ導入を検討されている企業様に、アドバイスをお願いします。
カーボンニュートラルへの取り組みについては、業界関係者を中心につねに情報交換を行っています。お互いに次に打てる手を探していますからね。
もし、電力センサを検討されているのなら、まずは一部の設備で導入してみるだけでも、多くの気づきが得られるはずです。
IoT電力センサは初期導入のハードルが低く、現場への常設もスムーズに進められるため、継続的なエネルギー管理に向けた第一歩として最適だと思います。
その後、複数個所に展開し実際に運用してみることで、設備ごとの特性や改善ポイントがよりクリアに見えてくるはずです。
また、クラウドでリアルタイムに数値が確認できるので、現場に行かなくても分析・判断ができるのは大きなメリットです。複数の現場を持つ企業ほど、この利便性は実感できると思います。
測定データがあることで、省エネ施策の効果を「見える化」できるだけでなく、社内外への説明や判断の根拠にもなると実感しています。
お客様プロフィール
設立 1947年2月17日
代表者 代表取締役 社長執行役員 福井 康樹
本社所在地 大阪市北区芝田一丁目1番4号 阪急ターミナルビル内
事業概要 オフィス・商業施設の賃貸、不動産開発、エリアマネジメント、不動産ファンド、マンションの分譲・賃貸、戸建住宅・宅地の分譲、仲介、リフォーム、賃貸管理、土地活用など
HP https://www.hhp.co.jp/
Q & A

ビルや商業施設の電力使用量を「見える化」するにはどうすればいいですか?
電力の見える化には、設備ごとに電力量を測定できるIoT電力センサが有効です。分電盤に簡単に取り付けられるタイプの電力センサを使えば、既存の建物でも後付けで対応が可能です。クラウド対応のセンサであれば、遠隔でリアルタイムにデータを取得・管理できます。

古いビルでも省エネ対策は可能ですか?
はい、可能です。築年数の古い建物でも、後付けのIoT電力センサを使えば個別設備の消費電力を可視化できます。これにより、どの設備がどれだけエネルギーを使っているかを把握し、空調や照明などの運用見直しや更新による効果測定が行えるようになります。

電力センサを活用すると、どのような省エネ効果が期待できますか?
空調やエレベーターといった主要設備の電力量をリアルタイムで把握・分析することで、無駄な運転を抑えたり、運転スケジュールを最適化することができます。また、設備更新前後の電力差を数値で比較できるため、省エネ施策の効果検証や投資判断にも活用可能です。
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